ユーザーズVOICE

選手編 / 監督編 / 大学講義活用事例

選手編

片山花女氏九州産業大学 空手道部

監督編

メントレアプリと乗り越える試練

杉野友厚監督九州産業大学空手道部

九州産業大学空手道部は2020年に創立60周年を迎え、全日本大学空手道選手権大会優勝男子2回を誇る強豪です。全日本制覇の悲願達成のためメントレアプリを活用する杉野友厚監督に、お話をうかがいました。

悲願達成とメンタル

ー 杉野監督ご自身もたいへんご活躍のOBでした

杉野:父がこの九産大空手道部監督でした。その影響で小学校2年生のとき父の道場に入門、空手を始めました。厳しい練習環境や仲間たちのおかげで、九産大在学中は全日本大学選手権で準優勝しました。違う言い方をすると、優勝出来なかった。残念ながらこの準優勝後、我が部男子は全日本で優勝していませんし、決勝の舞台から遠ざかっております。自分が出来なかった全日本優勝を学生にさせたい。その一念です。自分が優勝していたら監督は引き受けてなかったとおもいます。

ー 悲願達成に燃える杉野監督とメンタルとの出会いが。

杉野:選手が勝負に勝ち残っていくためには、メンタル(スポーツ心理)の知識が必要だと痛感していました。2018年の片山花女選手(世界学生選手権女子優勝)を例に挙げると、精神の揺らぎをどうコントロールしてライバルにどう対戦し打ち勝つか、実力を出し切るか。知識を入れておきたかった。メンタルに関連する本を読んだり独学で学んだりしましたが、本学にスポーツ心理学の専門家・磯貝浩久教授が赴任されてくると知り、真っ先に部長就任とスポーツ心理のご指導をお願いしに駆けつけました。

様々な相談に対して磯貝教授のご指導は具体的です。例えば試合での“緊張”について。「前日に必ず会場を全員で見に行きましょう。当日と同じルートで。」早速実行しましたが、当日朝から激しい風雨があり急遽行き方から変更を余儀なくされました。全日本の舞台、当日のアクシデント、開場の時間等も計算しなければなりませんでした。前日に一度見に行っておいて本当に良かったですね。前日が無かったら知らぬ間に選手のメンタルに影響していただろうと実感しました。その磯貝教授がスポーツ心理学の知見を妥協なく注ぎ込んだメントレアプリがあると聞き、ぜひ!とわたしと全部員の活用を決め、2018年夏から開始しました。

メンタルの可視化

ー メントレアプリ導入後のリアルを教えてください。

杉野:メントレアプリは毎日朝夕、自分の状態を入力します。その日の感情・気分・身体の痛み部位・練習の感想・日常の悩み・メッセージなど。入力時間はそれほどかかりませんが「面倒だ」と思えばそれまで。当然、入力しなかったりすることもあるわけです。この「入力率」で最も大きな驚きと発見がありました。管理者画面で全部員の入力率を見ていて、ある大会に出場させる登録選手一覧と比較したところ、登録選手男子10名女子6名全員の入力率が部内トップなのです。日頃、練習の有無に関わりなく朝夕入力する。これが出来ない選手が練習にも自主練にも取り組めるだろうか。そう考えればこの現象は大いに納得でした。入力率から既にその選手のメンタルを可視化している。当初入力率が低かったがしっかり入力するようになり、学業にもしっかり取り組み文武共に大きく成長した選手も少なくありません。逆に入力率の低いままの選手、途中から大きく低下した選手は「入力してないね、メンタル負けてるね」と。ハッキリわかります。

ー 部員との関わりが深くなったそうですね

杉野:一人一人とのコミュニケーションを重視しています。特に練習中は1回生2回生への声かけを重視し、3回生4回生は自発的に自分で考えて練習する方針でいます。多感な若いこの時期、悩み・揺れ動く想い・問題を抱えることは当然あります。個々の心身の状態を可能な限り把握し、状態に応じて的確な声かけをしたい。

ですが練習中一人一人に声をかけていっても、一人と話せる時間はほんの数分あるかないか。「最近どう?」から探っていく時間など無いわけです。メントレアプリはこの一人一人の状況把握に大きな力を発揮してくれます。感情・気分の状態、痛みなどフィジカルの状態、自由記載で率直な悩みや考えている事を伝えてくれる学生もいます。限られたコミュニケーション時間のなかで、状況把握した上での会話にスパッと入れる。内容が濃くなったと実感しています。

コロナがもたらした試練と強さ

ー コロナ禍は空手道部にどう影響しましたか

杉野:昨年(2020年)からの1年間で、学生たちはかなり強くなりました。 コロナ1年目、社会全体がまだ全く何もわからない状態。4月新入生入部直後の緊急事態宣言。練習出来ない日が続き、再開してもどういう形態でやれば良いか分からず、試合そのものがあるのかどうか見通しも分からない。努力の結果を披露する場=試合が無くなるかもしれない。この年の主将は特に試練だったと思います。学生皆には「試合はある。信じて鍛錬を」と指導していましたが、実は主将には「試合は無くなるかも知れない。どうするか。無いなら、来年の世代に繋げる鍛錬をしよう」と率直に話しました。

指導者のわたしも深く考える機会になりました。自分に出来る事はなんだろうか。練習のない無人の道場で、毎日神棚から全て清掃しました。この時間に、学生とのコミュニケーションをより強くとろう。試合が無いなら作れば良い!と福岡大学との対抗戦を企画しました。まだ何か出来る。いったん中止が発表された西日本大学選手権は、多くの皆様のご尽力で延期開催されました。

この2年間、「モチベーション」というワードが耳に入ってくるようになりました。空手道選手である以上、試合があろうが無かろうが空手道を探求して欲しい。葛藤のなかで常に戦う姿勢を身につけた学生たちはかなり強くなったと感じています。

メントレアプリは練習の有無・対面の有無に関わらず学生とのコミュニケーションに力を発揮しました。この期間ほどメンタルを問われたときは無かったのではないでしょうか。帰省中の学生たちにはこのアプリで毎日の検温報告もしてもらっています。

悲願達成の鍵は、道場の外に落ちている

ー 道場の外に落ちている、とはなんでしょうか

杉野:蹴りが強い・突きが速いといった身体的能力だけでは勝てません。相手を観察し空間を作る駆け引きなど、総合的に空手が上手くなければなりません。いろんなところにヒントがあります。本を読む・映画を楽しむ。他のスポーツも見るだけでなくこれ空手に活かせないかな?と常に自主性をもって考える習慣が重要と考えています。

学生には「オンオフをしっかり切り替えるよう」話しています。わたしは学生時代、しっかり遊びもできました。スノーボードをずいぶんとやりましたが、使う体幹が極めて空手道に近いと気づきおおいに参考になった経験があります。例えば何か映画に感動したとして、自分にその体験がどう落ちてくるか。常に考えながら高いレベルに自身の意識を置くようにして欲しいですね。

見えないところで頑張っている者には必ず、そして不思議とチャンスが巡ってきます。コロナ禍で試練を味わいながら努力した主将(令和2年度卒)は、全九州団体戦において準決勝は相性が悪い相手だったので、メンバーから外しました。しかし、迎えた決勝戦では中堅に投入。前2人が勝って王手をかけ、彼が勝利し優勝を決めました。磯貝教授からスポーツ心理を学ぶほど、日頃の寝起き・生活ぶり・考えが重要だと痛感します。その日々の成果・鍛錬が、不思議とチャンスとして巡ってくるのです。

心技体といいますが、心は最後。空手道における心とは相手へのリスペクト=スポーツマンシップです。これは相手への遠慮や慣れ合いを意味しません。相手がどういう状況でも常に隙なく攻めることこそが、相手への本物の敬意だと考えます。自分自身への姿勢にも通じるポイントですね。

これからの指導者へ

ー メントレアプリをここまで活用する指導者として、メッセージはありますか

杉野:メントレアプリは とにかくやればやるほど助かっています。毎日必ず管理者機能で見ていて、私の目標は「毎日チェック率100%」維持です。全部員のメンタルやコンディションを毎日把握できるツールなんて他にありません。練習日誌も書かなくて良くなりました。個人面談の時間も効率よくなりました。

指導者は選手と同じく、自身も入力したら良いと思いますよ。わたしも管理者のかたわら1ユーザーです。自身のコンディションやメンタルを毎日入力しています。

学生たちは本当に困ったらアプリに書いてきます。学生の問題を把握理解する、メンタルを可視化する。このプロセスが速く正確なおかげで、対応に全力を挙げることができると早い時期から実感しています。

わたしの目標は、空手道を通じて人間力溢れる人材を育てることです。試合に出られる人数は限られています。努力し続けること、出られなかった悔しさ、勝ち負けの喜び悔しさ、壁にぶつかって悔しい悲しい想いをする、全ての経験が社会に出た時に人間力となってあらわれると思います。

道場で生きていく道しるべを学んで欲しい。実は本学空手道部では高校時代に有名だった選手は多くありません。弱さを知る選手こそ素直に受け止め豊かに成長すると感じています。わたし自身も学生から豊かに学ばせていただいています。

見えないところでも学生と繋がるメントレアプリは欠かせない存在ですね。

Profile

杉野友厚すぎの ゆうこう

昭和52年生まれ。小学2年のとき父の道場(盛雲塾)に入門。九州産業大学国際文化部地域文化学科 在学中に全空連ナショナルチーム入り/平成11年全日本大学選手権準優勝(主将)。広告代理店勤務を経て2017年九州産業大学空手道部監督に就任。

九州産業大学体育会空手道部

1960年創部。活動場所/九州産業大学(福岡市東区)大楠アリーナ2020。卒業生約350人。全日本大学空手道選手権大会男子の部優勝2回/西日本大学空手道選手権大会男子の部優勝5回/女子の部優勝1回/2018年世界大学選手権女子個人組手優勝(片山花女)/他にも世界チャンピオン、アジアチャンピオン等、国内外で活躍した選手を多数輩出。

大学講義活用事例

メントレアプリはスポーツ心理学において有効性が確認されている手法が多数実装されているツールです。
大学研究者にもご評価いただいており、実際に講義で活用されている事例をご紹介します。

【メンタルトレーニングの演習に採用】

A大学では、スポーツ心理学の一つ、メンタルトレーニングの演習授業でメントレアプリを採用。
学生は全員メントレアプリで自分自身を管理し、メンタルトレーニングを実践演習するツールとして活用中です。
競技選手である学生が多くを占め、その後競技を継続する選手や、その経験を活かして将来スポーツ指導者を目指す方もいらっしゃいます。

開き直りと練習日誌

アスリートが世界大会などで実力発揮するためには「開き直り」がとても重要であることが研究で明らかになっています。本番でのこうした開き直りには、「振り返りがしっかりできているか」が大切です。
その競技における目標、考え方。どういう練習を積み重ね、どういう動機でやってきたか。
この振り返りの源泉が練習日誌です。練習日誌の質が良い学生ほど競技成績が良いという報告もあります。
そこでメンタルトレーニングの演習授業には、練習日誌の日々の記載提出が行われてきました。

遠隔のやり取りを可能に

この演習にメントレアプリが導入されたきっかけは、新型コロナ感染症の拡大。
大学でのあらゆる対面講義が出来なくなるなか、リモート下において練習日誌(冊子記録)のやり取りをどうするかという問題に直面しました。そこで演習を担当されているB先生は、スマホ入力が可能となるメントレアプリに着目。
機能確認したところ、早々に「たぶん使えるのではないか」と実感いただき、採用されました。

見える化とリアル性への評価

演習受講する学生の皆さんは、体調/気分/睡眠/身体の痛みなどを入力。アプリにより自分自身の状態を経時的に見られることで、関心高く「見える化」が可能となっています。
演習指導にあたる先生は、従来の冊子記録では1週間~数週間分のノートをまとめて見ることになっていましたが、メントレアプリによりリアルタイムに見られるのは大きな利点だと感じています。
まずは入力率の集計により講義への参加度として可視化しやすいとリアル性の長所を述べておられます。

演習担当の先生コメント

練習日誌/メントレアプリは、アナログ記載デジタル入力問わず、毎日の入力がたいへんです。
入力率が高い=自分自身の日常生活ルーティンを構築できる人=競技成績が良いのでは、と考えられます。
入力率や内容も人それぞれですので、向上の必要がある学生には励ましたり書き方の助言を行ったりしています。
スポーツ心理学で重視されている目標設定については、目標の立て方がわかる人に見てもらった方が良いでしょう。
アプリの心理尺度によって自分の課題を把握したうえで、目標設定についてメンタルコーチなどと相談すべきかもしれませんね。